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9月のトピックは「危機一髪」です!
「海外移住」と聞くと、キラキラとした側面が思い浮かびがちですが、いろいろな悩みや苦労に直面します。
海外移住をしたアンバサダーの皆さんに、移住後にいちばん苦労した出来事とそこから学んだ教訓について語ってもらいます。
はじめに
中国アンバサダーの吉岡愛羅です。
皆さん、「中国」と聞くと、どんなことを連想しますか?
最近、中国の裕福層が日本でマンションを購入したり、電気自動車(EV)やドローンなどの特定分野で一歩先を行くイメージがあるのではないでしょうか。
今の中国は、私が幼少期に過ごしていた頃とは大きく様変わりしました。昔は物騒な事件が多く、日本と比べて危ないイメージがありました。
しかし、今ではデジタル化が進み、特に都市部はとても安全で暮らしやすいです。
ただ、インターネットだけは、未だに不自由さを感じることが多いのです。中国ではインターネットに規制がかけられ、海外と比べて見られるサイトや利用できるサービスが格段に少ないです。
今回は、中国での特殊な通信事情と共に、生活する中での不便さについてお話しします。
特殊な通信環境、日本では想像できない不自由さ
中国ではLINE(ライン)やグーグルなど、日本で日常的に使っているインターネットサービスが使用できません。
例えば、日本では普通にアプリストアからラインやインスタグラムなどをダウンロードできますが、中国ではそれができません。国内では情報媒体に規制がかかっているため、アプリストアで検索してもアプリが表示されないのです。
私のように日本でラインを使っていた場合、中国に入国した途端、誰かからメッセージが来ても内容を確認できないのです。
ご参考まで、以下は中国で使用できないインターネットサービスです。
- LINE
- X(旧Twitter)
- YouTube
中国にはラインやインスタグラムに代わるアプリはたくさんあるのですが、私のような外国人にとっては不便です。ラインは家族や友人と繋がる重要な手段であり、グーグル検索は仕事上での調べ物に不可欠なツールです。
そのため、これらの情報サービスが使えないというのは、中国にいる外国人にとっては、死活問題といっても過言ではありません。
裏道を使って規制をかい潜る
そんな不自由な環境の中で、私のような外国人が、どのように情報サバイバルしているのか。気になるところですよね。
実は、VPN(Virtual Private Network)を使うことで、中国では「基本的には」使えないSNSやサイトが見られます。
インターネットを接続した状態でアプリの接続ボタンを押すと、繋がらなかったサイトやSNSが使えるようになります。
中国にいる外国人や、海外留学経験のある中国人は、VPNを利用して海外の情報を得ています。
VPNを使えば、ラインやグーグル、インスタグラムなどが使用できるようになりますが、VPNの位置づけは中国の中ではグレーゾーンです。技術自体は違法ではないものの、厳しく制限されており、業者も大っぴらに販売できません。
ちなみに中国のサイトでは、直接VPNという名前を避け、別の名称を付けて販売しています。
「外の世界を見よう」「翻墙软件(壁を超えるアプリ)」「外网(外のネット)」など、多種多様なネーミングで販売されています。
VPNがあっても、なお不自由
それでも、VPNは万能ではありません。VPNを販売している業者と突然連絡が途絶えたり、予告なく使用ができなくなることがよくあります。
また、政治情勢が不安定な時にはVPNが接続できなくなることも…。大事な調べ物をしている時や友人との会話中にVPNが使えなくなると、「なんでこんな時に限って!」と叫びたくなります。
こういう話をすると、「日本の家族や友人に、中国の会話アプリをダウンロードしてもらえば簡単に解決するのでは?」と思うかもしれません。
しかし、微信(ウィーチャット)はラインとは異なるアプリ設計のため、慣れるまでは非常に使いづらいものです。日本を離れる前に友人に微信で連絡してもらうよう頼んだところ、「ダウンロードしたけど使いにくい!」とのクレームが寄せられました。
結局は、微信とラインを状況に応じて使い分けています。
コロナ時の上海、VPN摘発
コロナ禍に、上海で警察が携帯の中をチェックし、VPNを削除していたというニュースが流れました。「ここまでするのか…」と怖かった記憶があります。
コロナが明けた今、個人の携帯を確認されることはあまりありませんが、こうしたニュースが実際にあったことを思い出すと、メディア統制の厳しさを実感します。
今の中国は先進的なイメージがありますが、通信事情を切り取ると、先進的とは正反対の「鎖国状況」です。
しかし、「郷に入っては郷に従え」。厳しいメディア規制は中国にいる限り受け入れざるを得ません。
安定したVPN業者を探し、突然接続できなくなった場合でも焦らず回復を待つことが大切です。柔軟に不自由さに対応するマインドを身につけました。
現時点では「外国の情報サービスが不自由なく使用できる」というような大きな期待は持てません。ただ、それでも中国の通信環境に「多様性」が訪れることを、中国に住む外国人として切に願っています。
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