世界各国から現地のリアルな情報をお届けするアンバサダー発信。
10月は、アンバサダーが今最も関心のあるトピックを自由に書いています。
住んでいる国も違えば、置かれている状況も異なるアンバサダー。
リアルタイムな関心事を語ってもらいます。
はじめに
はろーぽ!フィリピンのヒデシマです。
以前、こちらの記事でフィリピンでの妊娠生活、特にフィリピンでの産休や妊婦検診についてご紹介しました。
出産を間近に控えた今回は第2弾として、出産後の生活を見据えた妊娠生活を紹介させて頂きます!
会社員共働き夫婦、2人のメイドを雇う
インフレに伴う物価上昇が進むフィリピンですが、現在もベトナムやタイなど、他の東南アジア諸国と比べ人件費は安く、特に日本人など外国人の子育て世帯やフィリピン人の裕福な家庭ではメイドの雇用が一般的です。
我が家は共働き、かつ、私は現地採用で、国規定の産休105日の後すぐ職場復帰が必要で、身近に新生児を預けられる保育施設がないことから、ベビーシッターを雇用することにしました。
フィリピンでは、メイドやベビーシッター、コックなどいわゆる家事労働従事者(フィリピンではkasambahay カサンバハイと呼ばれます)は、知人からの紹介や、SNSでの求人、もしくは人材派遣会社を通じて探すことができます。
私たちは、結局知人の紹介や、夫の会社のツテで、住み込みのベビーシッターと通いのメイドを計2人雇用することを決めました。既にそのうち通いのメイドは、仕事を始めています。
家でメイドを雇うと聞くと、気になるのは金額かと思います。月の支出は2人分で計6万円弱です。
この選択は、特段裕福ではなく、子供が沢山いる家庭でもないのに、贅沢なのかもしれません。
しかし、我が家は共働きかつ、身近にいざという時に頼れる家族や友人はいません。
そして、これまで接してきたフィリピンの方々への総合的な評価として、日本人と比べてフィリピン人は仕事を急に休みやすく、辞めやすい傾向があると考えています。
もし1人しか雇わなかった場合、1日だけの休みならともかく、急に辞めると言ってその日から来なくなってしまうと、次のメイドを見つけるまで、夫婦のどちらかが仕事を休み続けなければならなくなる、、そんな事態を想定しての判断です。
現に、先ほどの求人コミュニティでも、「(求人公開日の)翌日から来られるメイド募集!!!」と緊急性が感じられる投稿をよく目にします。また、既に働き始めたメイドさんも、勤務態度は真面目なものの、「家族都合だから…」と言い残し、有無を言わさず帰宅してしまったこともありました。
そのため、改めてバックアップの重要性を感じて、2人目の雇用を決断しました、、
一方で、2人のメイドさん達は、子育ての先輩かつ子供が好きだからこそ、この仕事に就いていることもあり既に心強い存在。
我が家に足りないベビーグッズをアドバイスしてくれたり(赤ちゃん用のハンガーや、布おむつを洗う用の容器、洗剤など)、「育児は一通りわかるが、日本流の子育てがあるだろうからあなた方のやり方を尊重する」と言ってくれています。
他人を雇用し、同居しながらの新生活は不安もある一方、良い面を見て、フィリピンだからこそのスタイルで我が子との新生活を始めていきたいと思います。
粉ミルク不可!?母子同室マストの入院生活
フィリピンでは、出産が近づくと、いつ出産しても良いように、洗面用具、赤ちゃん用品などをまとめた入院用グッズを用意します。
そこで、病院側の備品や自分で用意しなければいけないものを確認するのですが、そこで看護師さんから衝撃的なコメントが!
それは、粉ミルクの持ち込みも、病院側からの支給も法律で規制されているという事です。
世界保健機構(WHO)は母乳を推奨していますし、日本でも母乳重視の病院はありますが、あくまでママの体調や意志が優先されている印象でした。
しかし、フィリピンでは大統領令第51号 (EO.51)という法律で、母乳育児が推奨され、粉ミルクや乳児用食品のマーケティング(特に対医療機関)が規制されています。
病院には粉ミルクを作る設備はありません。私の入院先では、ママから母乳が出ない場合、母乳バンクという他の女性の母乳を保管する設備を使用したり、母乳外来を頼る仕組みがあります。
このEO51は、1981年にWHOが制定した「母乳代替品のマーケティングに関する国際基準」を受けて86年に発令された法律です。
粉ミルク会社のマーケティングは、「母乳よりも良く、栄養価が高いと、誤った非科学的な印象操作を与えている」として、粉ミルクを規制するために発令されたと言われています。
私自身、粉ミルクは確実に必要だと思っていましたし、初めて病院で「粉ミルク不可」と聞いた時は思わず「日本ならこんなことはないのに…」とがっかりしました。
しかし改めて調べてみると興味深い背景があったのだと気づかされました。
そして、このEO51に関連して、共和国法第7600号(RA7600)という、母乳育児と母子同室を推進する法律もフィリピンには存在しています。
日本では、例えば帝王切開で母体の回復に時間がかかる場合、母子別室でのケアが選択できますが、フィリピンでは基本不可です。
現に帝王切開で出産した知人は、頼み込んでも赤ちゃんを預かって貰えませんでした。
主には母乳育児を推奨するための母子同室ですが、その他にも母子の結びつきを強める目的もあるそうです。
病院で掲示されていたEO51とRA7600の概要。
勉強になります。
元々日本人のブログや友人たちの意見で、「粉ミルク育児で全然OK!」「粉ミルクなら、パパも授乳出来て愛情が増します!」「母子同室は心身ともに消耗して、我が子をかわいいと思えなくなってしまった…」というエピソードに触れていたため、フィリピンのこれらの規制は「なんて時代遅れなんだ!日本はママが選択出来て良い国だな、羨ましいな」と思っていました。
しかし、法律制定の背景から、これらの法律はフィリピン独自ではなく、世界的な動きであり、自分が元々触れていた情報の方がむしろ偏っていたことに気づきました。
しかも、母乳育児を実践している知人の話も聞いていたのに、大変そうで、産後早々に復職する自分には関係のない話だと、無意識に切り捨てていたことを思い出しました。
フィリピンに住んで4年。慣れ親しんだ日本と比べて沢山の「日本に有って、フィリピンに無い」「日本ならできて、フィリピンではできない」と感じる物事に触れてきました。
母国を離れ、異国で生活する中で、無意識の内に、日本とフィリピンに差があるごとに「日本が正で、フィリピンが誤り」とする思考が染みついていた様です。
フィリピンは、インフラやシステムが多少日本より劣っていたり、役所やショップ店員の融通が利かないという側面もありますが、その一方で、街中で乳幼児連れの家族や妊婦を見かけると荷物を持とうとしたり、道を譲ってくれたり、はたまたトイレやレストランの順番待ちさえも譲ってくれたりと、日本にいるより他人の優しさに触れる機会が多いです。
メイド雇用、入院を見据える中でフィリピンへの目線を新たにし、3人家族の新生活をフィリピンで送っていきたいと思います。
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