
夫が日本、母子がマレーシアという「逆単身赴任」で教育移住を実現したもえこさん。「子どもの教育」が移住の目的ですが、一方で、親のキャリアや生活はどうなるのでしょうか? 今回は親目線のマレーシア移住について語ってもらいます。
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私は「子どもの教育移住」という目的でマレーシアに移住しましたが、人生を子育てだけに捧げたわけではありません。子育てするにもお金が必要ですし、自分自身のキャリアも、その時々の状況に合わせて柔軟に形を変えながら歩んできました。
キャリアの歩みと考え方
まずは、私のキャリアと仕事観についてお話します。
私は、リーマンショックが起きた2008年に就職活動を経験し、日系の総合電機メーカーに就職。初めての女性総合職として地方支店に配属され、キャリアをスタートしました。目の前の仕事を懸命にこなす日々を過ごしていましたが、転勤族の夫との結婚を機に仕事を変えることに。外資系コンサルで働く中で、日系企業と外資系企業の職場環境や価値観の違いに衝撃を受け、働き方について深く考えるようになりました。
マレーシア移住を計画した際、現地の企業に就労することも検討しましたが、一旦は子どものサポートを優先することに。
日本では、共働きで小さな子どもを朝早く保育園に預け、夕方ギリギリまで迎えを待たせる生活に疑問を感じていました。そのため、マレーシアでは「時間的に追われず、私の価値を活かせる仕事をしたい」という目標を持っています。
“どんな仕事がしたいか”よりも、“どんな暮らし方をしたいか”の「ライフ」の方を主軸に考えています。その「ライフ」を実現する働き方を手に入れるためには、仕事は真面目にコツコツ頑張るタイプです。
現地企業で働いた貴重な経験
マレーシアでのコロナ禍ロックダウンを乗り越え、自由な生活が戻ってきた頃、「そろそろキャリアでアクセルを踏みたい」という気持ちが高まりました。
そこで、マレーシアの日系企業に就職。オフィスでは日本人は私一人、同僚はマレーシア人、社内の公用語は英語という環境の中で、異業種への転職を果たしました。

毎日が新しい学びと発見の連続で、商習慣や働き方の違いを体感した貴重な体験でした。
例えば、クライアントに仕事の期限を確認すると、”Yesterday”と言われたことも。意味が分からず混乱しましたが、実は「昨日にでも完了していて欲しいくらい急いでいる」というニュアンスだと学びました。
ムスリムのお祈りの時間、特に金曜の午後はもう連絡がつかないと割り切ってスケジュールを組むこと、お昼休憩に行ったら1〜2時間は捕まえられないこともあるから急ぎの用は午前中に済ますこと、などマレーシアでの働くあるあるを実体験しました。
オフィスワークだけでなく、商談に出かけることもあり、子どもの送迎や食事の支度とフルタイム勤務の両立は予想以上にタフでした。
働くママの時間の使い方
フルタイムの海外就労、母子生活の1日はバタバタでした。そんな中でも家と、学校、職場を移動する運転中が、ほっと一息つける自分の時間でした。
当時のスケジュールを振り返ってみます。
7時40分:子どもを学校に車で送る。学校の門が開くと同時に登校。
8時30分:オフィスへ出勤。今日の予定を確認し、朝の社内ミーティングに参加した後、業務に取り掛かります。商談があれば、車を運転して向かいます。オフィスでは、営業電話をかけたり、問い合わせ対応をしたり、社内メンバーと調整業務など。
12時:1時間の昼休憩は、同僚と近くのフードコートへ出向きランチを取ります。マレーシア人の若者の感覚を知れる楽しい時間です。
2時30分〜3時30分:仕事を中抜けして、学校のお迎えに向かいます。子どもをピックアップした後は、自宅へ戻り業務を再開。子どもたちは部屋で自由に過ごしたり、友人が習い事に連れて行ってくれたりする日もあります。

19時30分:仕事を終え、日本の夫とオンラインで繋いで一緒に夕飯。平日はおかず3品が届くデリバリーを利用。米を炊き味噌汁を用意すれば、もう食べられるのでとても助かっています。
子どもたちが学校であったことや習ったことを伝える時は、パパにはちゃんと日本語に変換して伝えるように気をつけています。英語で習ったことを日本語でも説明することで、両方の言語での理解の深まりの助けになるかなと思っています。
21時:明日の支度を済ませ、子どもたちは自室へ行きます。息子は独自のルーティーンがあり、電気を消す前に今日あったいいことと、明日のWISH(願い事)を言い合います。なんだかポジティブな気分で寝られるのでおすすめです。
忙しい日々…方針転換を決意
マレーシアに来たのは、子どもたちをゆるりとした環境で育てたいという思いからでした。ですが、フルタイムで働くと、出勤の移動時間も生じるので、日本で働いていた時と同じような忙しい毎日になってしまいました。
マレーシア人のママ友も仕事をしている人は多いですが、祖父母の協力があるか、ナニーさんを雇っている場合がほとんど。母一人で何のサービスも利用せず、仕事と子育て両立するのは難易度が高かったです。
友人に子どもの面倒を見てもらったり上司に恵まれたりしたおかげで、多少働き方を融通してもらえたものの、負担が大きいのは否めませんでした。「この生活を続けたら健康を損なうかもしれない…」と危機感が募り、現地就労を終える選択をしました。

自分もゆるりと出来る余裕を持って子育てしたい。自分のペースで働いていきたい。この両方の希望を叶えるためには、フルタイムの会社員の働き方は、今はまだ早いかなという結論に落ち着きました。
一度“働く”のアクセル全開に踏んだ後なので、理想的なマレーシア生活を送るため、働き方のバランスを模索し、ここ1年は自分のペースで働けるフリーランス的な働き方を実践しています。
「働く」ことは人生の一部でしかありません。私にとって理想的なライフスタイルは、子育てと仕事のバランスを取りながら、自分の時間も楽しむこと。現地就労も経験してみたからこそ、自分らしくいられるバランスを見つけられました。
ちなみに我が家は、夫が教育費、私が生活費を出すという分担にしています。私がこんな風に過ごせているのは、夫婦共働きで頑張れているからこそです。
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