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2月のトピックは、「価値観の変化」です。
海外移住をすれば、色んな発見があるはず。世界各国で働き、暮らすアンバサダーの皆さんには、どんな経験をして、どんな価値観の変化があったのでしょうか?
Goedemiddag! オランダよりRikoです。
今回はオランダに移住して自分の中で考え方が変わったな、と思ったことを3つご紹介します。
無理をせず合理的にフレキシブルに
オランダに住んでいると、オランダの何が好き?とよく聞かれます。
食べ物は美味しくない、天気はいつも悪い、人はあまり優しくない……。挙げてみると嫌なことばかり。でも一つ言えることは「ワークライフバランス」は最高だということ。
オランダでは“Sick Leave”(病欠)が有給とは別で取得できます。さらに、取得日数に制限がなく、風邪が治るまで休んでもいいというルールが法律で定められています(長期療養になった際には別途手続きが必要ですが、最大で2年間給与が支払われる仕組みです)。
周りの同僚も、軽い風邪でもすぐに「病欠で休みます」と1週間休むことも日常茶飯事。そんな文化に未だ慣れず、風邪を引いても働こうとしている私を見て、「何をしているんだ、ベッドでゆっくり寝てなさい」、「仕事と健康、自分の身体の方が大事に決まっているじゃないか」と教えてくれます。
この「無理をしない」働き方は、最初はすごく慣れませんでした。というのも、日本にいると必然的に周りに迷惑をかけないように無理をしてしまうことが多いからです。ヨーロッパの自分の健康(身体)を第一に考える文化は、本来はそうであるべきなのだなと改めて気付かされた瞬間でもありました。
また、オランダは合理主義の国なので、結果さえ出してくれればその過程はあまり気にしないという背景もあると思います。病欠で休もうが、遅刻が多かろうが、おしゃべりが多かろうが、仕事のやり方は自由で、結果さえ出していれば評価されるという文化。
日本のように、態度で示す、遅刻厳禁、マナーよく、といった仕事とは直接関係のない部分まで気にする必要はありません。上司に対してゴマをする、ご機嫌を損ねないように飲み会には必ず参加する――。こうした日本特有の「Noと言えない文化」とは正反対に、17時半に仕事を切り上げて、夜は家族や個人のプライベートを大事にするので、職場の人と飲みに行くことは特定の仲のいい人を除いてほとんどありません。
オランダのワークライフを一言で表すと、「無駄がない」。無駄な人付き合いもないし、無駄な残業もしない。この考えや働き方が私にはとても心地いいです。このワークライフを手にするために、オランダに来たのだと実感しています。
結婚or独身? 多様なパートナーシップ
オランダでは日本とは比べ物にならないほどのRelationship(関係性)に対する考え方が多様です。
オランダは世界で初めて同性婚を認めた国として有名で、LGBTQの先進国とも呼ばれています。そのため町中にはたくさんのLGBTQの人たちがいて、男女のリレーションシップだけでなく同性のリレーションシップも多く存在する国なのです。
「結婚」までもがもはや主流の考え方ではなくなってきていて、オールドファッション(時代遅れ)と表現される時もあるくらいです。
「事実婚」を選択する人もいれば、子供がいても、結婚も事実婚もしないカップルも存在します。さらには「オープンリレーションシップ」と呼ばれる、双方の合意の元、複数のパートナーと交際する関係性もあります。
30歳になったからそろそろ結婚でも、、、といった日本特有のプレッシャーや暗黙のスタンダードといったものは一切なく、とにかくこの国には「自由」が溢れています。
これだけ様々な関係性があるオランダでの交際は、スタートする前にそれぞれのタイプや求める関係性をお互い確認して、合意した上で交際がスタートします。「合理主義」はここにも表れていて、自分の求めているものが最初から異なる場合は、時間とエネルギーの無駄になるという考え方があります。ある意味納得ですね。
日本では「結婚」もしくは「独身」といった道しかなかったものが、オランダで様々なリレーションシップの形態を見ていく中で、選択肢がぐっと広がりました。さらには年齢的なプレッシャーもこの国にはない。まだまだ若い、これからだ、という考えを持ったオランダで学んだことは、のんびりゆっくり時間をかけて考えていけばいいのだということでした。

ダイレクトに伝えるという気遣い
もう一つは、コミュニケーションの取り方があります。
オランダ人は「意見を言う」とよく言われますが、これは学校や職場の中に限った話ではありません。日常で起こる小さなことに対しても「意見を言う」ことが大事です。
当初はあまりにも遠慮のない言い方に、「ちょっとそれ相手に言ったら失礼だと思わない?」と聞いたことがあります。そうすると「失礼?言わない方が失礼だよ!」との返答。
驚きましたが、私とは全く逆の思考回路を持っているのだと、その時気づきました。相手に素直に伝えてあげることで、相手が気づかないことを教えてあげる、といった気遣いのようです。日本人特有の「空気を読む」「相手を察する」「遠慮する」といった気遣いとは正反対ですね。
よく考えてみると、オランダ流の気遣いはいいこともあります。
例えば、相手の行動で気に入らないことがあるとします。最初の1回だけ勇気を出して、「苦手だからやめて欲しい」と言えば次回以降相手は直してくれるはずです。ただ、「こんなこと言ったら失礼だから…」と遠慮し続けると、その人と会う度に不満が出てくる。結果的に、いい関係を築くのが難しくなってしまいます。
日本の「遠慮の文化」で育った私からすると、最初の一歩はすごくすごく勇気のいることでした。ところが、初めて相手に「それ私の前ではやめてほしい」と言えた瞬間に、安堵感とともにすっきりした気分に。以降は、自分がされて嫌なこと、気になることを問題なく伝えることができるようになりました。
もちろんこれが日本で適用できるかといったら、できません。相手もそれに慣れてないから。オランダでこのやり方が通用するのは、オランダ人は意見を言われても何も気にしない、むしろ「気づかなかった。ありがとう」と受け止めてくれるからです。これは文化の違いであって、良し悪しではありませんが、つまりこれが郷に入っては剛に従え、ということだなと実感しました。
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